大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和59年(行ウ)10号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

2 ところで、行政庁に対し作為義務の確認を求める訴えが許されるかについては行政事件訴訟法になんらの定めがなく、もし、このような訴えを是認すれば、ある行政行為の権限を付与された行政庁を一般的に監督する権限を裁判所に付与し、ひいては裁判所に行政権の行使を是認したことにもなるので、右のような訴えは三権分立の建前から原則として許されないものと解すべきである。

しかし、行政庁がある行政処分をなすべきことが法律上覊束されていて裁量の余地のないことが明白であり、しかも第一次的判断権を行政庁に留保することが必ずしも重要でなく、さらに行政庁の行政処分を待つていては多大の損害をこうむるおそれが顕著で事前の救済の必要があるが、他に適当な救済方法がない場合に限つて、極めて例外的に行政庁に対する作為義務の確認を求める訴えが許されるものと解するのが相当である。

3 これを本件についてみるに、国民金融公庫法二八条二項は「大蔵大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公庫に対し業務に関し監督上必要な命令をすることができる」、同法三〇条一項は「大蔵大臣は、必要があると認めるときは、公庫に対して報告をさせ、又は職員をしてその事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる」と規定しているので、同規定の趣旨、規定の仕方及び監督権行使の対象となつている事項の性質などから考えて、本件は、被告の監督権行使について、法律上覊束されていて裁量の余地がないほど明白で、しかもその第一次的判断権を被告に留保することが重要でない場合に当るとは到底いえない。

さらに、原告らの本訴請求は、要するに、公庫の競売申立事件を違法不当として被告の監督権行使によりその取下げを義務付けるものであるところ、かかる事案は、本来、公庫と原告ら間の民事上または執行上の紛争として民事訴訟等の不服申立てにより解決救済されるべきものであつて、行政訴訟による事前かつ緊急の救済の必要が顕著な事案とは到底いえない。

(村上博巳 小林一好 横山光雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!